貝殻採集的回想/ZINE(2017)

GRAPHIC

Zine it! vol.8に参加した時につくったzineです。

自由研究という名の遊び
親が共働きということもあり幼稚園の頃から祖父母の家に泊まることが多かった。その名残で小学校を卒業するまでの土日は祖父母の家に泊まりに行くのが習慣になっていた。友人との話の中で幼少の頃の記憶という話題になると必ずといってもいいくらい祖父母が住んでいた平屋の映像が浮かんでくる。それだけ長い時間を3人で過ごしていたので年齢が近い親戚の中でも1番可愛がられていた自負がある。祖父が亡くなって約5年。いまは祖母が1人で住んでいる家の玄関には小6最後の夏休みに祖父と一緒に取り組んだ夏休み自由研究「貝殻採集」の木箱と集めた貝殻がたくさん飾ってある。先日、掃除をしていた時このきれいな貝たちと僕の頭の中にある祖父とのうろ覚えな夏の記憶を、なにか形に残しておきたいなという超個人的な思いからZineを作ることにした。

夏休みのとある朝、祖母が握ってくれたおにぎりと赤貝の缶詰め、それと大きい水筒にお茶を入れて祖父の愛車、日産サニーで出発した。免許を持っていない当時の僕は目的地までどの道を通るかなど興味がなく、車が動くたびに移り変わる窓からの景色を見ながらNHKのAMラジオを聞いていた。車中では「夏休み子ども科学電話相談」を聞いていたのをすごく覚えている。そしてお昼に放送される「ひるのいこい」のオープニングメロディは「君が代」みたいに体に染み込んでいて、いまでもたまに昼飯を食べながら聞いたりしている。Zineをつくるため、祖母に当時のことを聞いたりしていると頭の奥で何十年も引っ張り出されることのなかった祖父との記憶が溢れてきた。たぶんきっかけは貝殻採集じゃなくてもなんでもよかったんだな。僕はまだ結婚はしていないけど子供ができたら一緒に楽しめる好きなことをみつけて祖父がしてくれたように多くの時間を過ごそうと思う。祖父と過ごした日々がいまの僕を形成している。たぶん僕は大人になったんだろう。