夏休みのとある朝、祖母が握ってくれたおにぎりと赤貝の缶詰め、それと大きい水筒にお茶を入れて祖父の愛車、日産サニーで出発した。免許を持っていない当時の僕は目的地までどの道を通るかなど興味がなく、車が動くたびに移り変わる窓からの景色を見ながらNHKのAMラジオを聞いていた。車中では「夏休み子ども科学電話相談」を聞いていたのをすごく覚えている。そしてお昼に放送される「ひるのいこい」のオープニングメロディは「君が代」みたいに体に染み込んでいて、いまでもたまに昼飯を食べながら聞いたりしている。Zineをつくるため、祖母に当時のことを聞いたりしていると頭の奥で何十年も引っ張り出されることのなかった祖父との記憶が溢れてきた。たぶんきっかけは貝殻採集じゃなくてもなんでもよかったんだな。僕はまだ結婚はしていないけど子供ができたら一緒に楽しめる好きなことをみつけて祖父がしてくれたように多くの時間を過ごそうと思う。祖父と過ごした日々がいまの僕を形成している。たぶん僕は大人になったんだろう。
